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実はこんなにお金がかかるなんて衝撃!

「老後破産」を招く6つの理由と対策【介護アドバイザーが解説】

年金、介護、医療費など、老後のお金にまつわる心配事は少なくありません。日々の生活に追われ将来のことを考える余裕すらないのも事実ですが、親も子も元気なうちに老後資金のことを考えておかないと損をするのもまた事実。

なぜなら、実は「老後破産」の危機は、思った以上に多くの高齢者に迫っているからです。

今回は、老後破産に陥ってしまう6つの理由と今すぐできる対策を、介護アドバイザーの横井孝治が解説します。

理由1:年金受給額が思ったよりも少ない

国民年金・厚生年金に加入している人には誕生月に毎年「ねんきん定期便」が届き、保険料の納付実績などを確認することができます。

50代になると、60歳まで保険料を納めた場合の年金額が記載されることになりますが、あくまでも“予想受給額”です。税金や社会保険料が天引きされた手取り額とは大きな開きがあることも多く、注意が必要です。

また、役職定年がある会社で働いていた場合、管理職手当が削られた分、ねんきん定期便に記載されている見込額よりも実際の受給額は減ることになります。

他にも、転職して給料が下がったり、介護のために離職したりしても同様に、年金額が大きく変わるはずです。

理由2:生活レベルを落とせない

一度上がった生活水準を下げるのは、老若男女問わずどんな人においても至難の業。ましてや高齢になると、新しい環境への対応が苦手になりがちです。

そんな中、無理して生活水準を大幅に落としてしまうと、みじめな気持ちになったり憂うつな気分になる可能性が……。

生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」(2022)によれば、老後の2人暮らしをするうえで、日常生活費として必要だと考える月々の最低金額は、全世代平均では23万2000円、60代平均は24万円、70代平均は22万6000円。

また、老後のゆとりのために、先ほどの日常生活費以外に月々必要だと考える金額は、全世代平均で14万8000円、60代平均は14万7000円、70代平均は13万6000円とのこと。

これらの数値はあくまでも平均値であり、貯蓄額や生活レベルによって多少前後することが想像されます。

ただし、旅行に行ったりおいしいごはんを食べたり、生活のゆとりとなる部分を思い切って削ってしまっては生活の質がダウンしてつらくなりますから、楽しい老後にはある程度の費用が必要になると思います。

理由3:定年退職後も住宅ローンが残っている

住宅ローンの返済期間を最長にすると、定年後もローンが残りがちです。また、自宅の老朽化に伴い、大規模なリフォームを行うこともしばしば。

もしも一緒に住む家族が増えたり、介護のために親子で同居したりすることになれば、二世帯住宅への建て替えで新たな住宅ローンを組むこともあるかもしれません。

理由4:定年退職後も教育費などがかかる

晩婚化によって、親が定年退職した後も、子どもを扶養する必要があることは珍しくなくなりました。

たとえば、子どもが医師や弁護士など、より多くの扶養期間や教育費がかかる目標を持てば、当然親側の負担も増えます。

その他にも、大学院への進学や留学などを望んだり、残念ながら留年や中退をしてしまったりすれば、教育費などがかさむことは避けられないでしょう。

親としては子どもの夢をかなえてあげたい、お金がないから無理とは言いたくないと思いますが、自分たちの老後資金が尽きてしまっては本末転倒です。

理由5:医療、介護に関する費用が想像以上にかかる

病気や要介護状態にならないのが一番いいことですが、なかなかそう思い通りにはいきません。

人は必ず年を取りますし、年齢を重ねて体が弱くなれば病気にかかったり、介護が必要になったりするリスクが高くなるのは必然です。

厚生労働省の「生涯医療費」(令和3年度)によれば、国民1人あたりの生涯医療費は2815万円で、年代別に見ると50代からぐっと増え始め、70代が最も高くなっています。

実際は、公的医療保険などによって、自己負担額はここで示した数値の1~3割となるものの、健康を害したときにある程度の備えがないと「老後破産」を招くリスクが高まることは想像に難くないでしょう。

また、筆者の試算したところによれば、在宅における介護費用は初期費用として100万円~200万円、月額費用として3万円~6万円ほどかかると考えます。

【初期費用の内訳】
必須
・バリアフリーリフォームなどの住宅改修費:100万円~200万円
・お風呂用の安全なイスなどの介護用品購入代:5000円~1万円

プラスα
・介護用品購入代(保険適用外):2万円~10万円
・福祉車両購入代:150万円~400万円

【月額費用の内訳】
必須
・介護保険サービス代:1万5000円~2万5000円
・通院代:1万円~2万円
・おむつ購入代:5000円~2万円

プラスα
・レトルトの介護食費:1万5000円~3万円

暮らしている地域や病気の有無、要介護度、在宅か施設介護かなどで介護費用は大きく変化するものの、介護費用だけでもこれだけのお金がかかるのです。

理由6:事故などで想定外の出費が発生する

自宅で転倒するなどささいな事故でも、高齢になると重症化しやすくなる傾向にあります。治療費や、自宅に手すりを付けるリフォームなど、生活環境を安全に整えるための費用がかさみがちです。

また、高齢者ドライバーの運転による事故が相次いでいますが、交通事故を起こすと修理代や賠償でお金がかかることはもちろん、人身事故を起こせば取り返しのつかない事態に陥る可能性も少なくありません。

老後破産を避けるためにできること3つ

では、老後破産を避けるために、何ができるのか。筆者は大きく3つのポイントに分かれると考えています。

まずは「収入を増やす」こと。投資について勉強して、無理のない範囲で実践するのもいいかもしれません。

なお、高齢の親だけに任せると金銭トラブルにつながるリスクが高いため、子どもも一緒に「これからのお金、どうしようか」と相談しながら進めていくのがいいでしょう。

また、定年退職後もなんらかの仕事をして、継続的に収入を得ていくことも必要だと思います。

2つ目は「リスクを減らす」こと。親子で老後の費用について話し合い、ムダ遣いを減らすことは老後破産を避けるために大切です。

「退職金をもらったからぜいたくしたい」「親の生活に口を出すな」などと、老後資金の話を嫌がる親も多いでしょうが、一度で済まそうとせずに時間をかけて何回も話し合ってみてください。

また、適度な運動や生活習慣の改善で健康を維持すること、ある程度のバリアフリーリフォームや福祉用具の活用で生活環境の安全性を高めることも大事だと思います。

運転に不安があるなら、免許返納も視野に入れて「どうすれば安全に過ごせるか」考えてみてください。

最後は「負担を減らす」こと。高額医療費や高額医療サービス費など、医療や介護にまつわる費用を軽減する制度を勉強して積極的に活用しましょう。

必要に応じて、民間の医療保険や介護保険を利用して一時的な出費に備えたり、生活福祉資金貸付制度など公的な融資制度を使えば、いざというときに対応することもできるかもしれません。

こうした制度を調べて知っておくだけで、老後破産を招かずに済む可能性が高まるのです。

ご紹介した方法以外にも、今すぐ実践できることは少なくありません。少しでもリスクを減らしておきたいところです。

なお今回は、老後破産を招く理由の中から、以下の理由は除外しています。

・失業した、転職に失敗した
・事業や投資に失敗した
・借金の保証人になっている
・ギャンブル依存である
・買い物依存である

これらは、老後に起きた事情による破産ではなく、そもそも破産、または老後破産予備軍だったものでしょう。

参考
生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」
厚生労働省 「生涯医療費(令和3年度)」

2024.7.9

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