「夫の浮気」に悩んで“すがりつく”のはプライドがない?40代女性が主張する夫婦のあり方
配偶者の浮気に関してどう思うかは個人差が大きい。何に価値を置くか、今と将来への展望も関係してくるだろう。誰もが同じ価値観を持つわけではないのだ。
ママ友から相談されてドン引きされて
結婚して13年、10歳と7歳の子がいるヨシノさん(44歳)。夫は3歳年上、自分で事業を立ち上げ、それなりに稼いでいる。
子どもたちにとって父はヒーローであり、彼女にとっては“イケメンの夫”でもある。
「でもね、うちの夫は浮気しているんですよ。わかってるの。
今までにすでに3回は相手が誰かもつかんでいる。そろそろ恋が煮詰まっているなと思ったタイミングで、『忙しい? 疲れてるんじゃない? 心配だわ』と大げさに言うと、翌週からは早めに帰ってくる。そんなことの繰り返しです」
夫の浮気を許しているわけではない。
浮気されたと嫉妬するのもみっともないし、「そもそも、そこまで夫を男として愛してない」と彼女は断言する。
そんなヨシノさんが、ママ友に「うちの夫が浮気しているかもしれない。どうしよう」と相談されたことがある。
ママ友は「私は夫に恋しているのに」と泣いていた。
「なんだかプライドをなくして夫にすがりつこうとしている彼女を見ていて、ちょっと腹が立っちゃったんですよ。『だったら証拠を集めて離婚届を突きつけてやればいいのに』と言ったら、『離婚なんかしたくない』と。
『じゃあ、黙って嵐が過ぎるのを待つしかないかもよ、ときどきチクチク嫌味を言ってやりながら』とアドバイスしたら、『そんなことして嫌われたらどうしよう』って」
最後には「あなたはどうしたいのよ」と詰め寄ってしまったという。ママ友は涙目になりながらヨシノさんを見つめ、「あなたには人の心がないの?」と言ったのだそう。
「『うちの夫だって浮気三昧だよ。だけどそんなこと気にしていたら、家庭なんてうまくいかないじゃん。
あなたの優先順位は何? 私は子どもが最優先。子どもが幸せなら、それでいい。夫からはお金を搾り取って、なるべく楽な生活をさせてもらうわ』と言い切ったんです。
確かに私、子どもたちと3人、不自由なく暮らせればそれでいい。
あとは子どもと将来の自分のために少しずつ預金を増やす。それだけですね」
夫の愛情を取り戻したいとか、また恋人時代のような関係を作りたいとか、そんなふうには思っていないとヨシノさんはつぶやいた。
夫が戻ってきたらそのとき考えればいい
ママ友の夫も、深刻な不倫に陥っているわけではなさそうだし、経済的に不自由が生じているわけでもない。
「だったらあまり追いつめないほうがいいというのが私の考え方。それは夫の逃げ場をなくさないようにしようということではなくて、勝手にさせておけばいいんじゃないのという冷たい気持ちからなんですけどね」
ところがママ友にはドン引きされ、あげく「浮気しているような夫を父親にもつ子どものことを考えたことがあるの?」と反論された。
子どもに知られないようにすればいいだけのことなのにねとヨシノさんは苦笑した。
「夫の愛情を期待するからガッカリするんですよね。私が夫に期待しているのは、生活費と子どもへの愛情。それ以外は期待していません。
私は夫に内緒でパート仕事をしているけど、その収入は自分のために貯めています。
すべての答えを出すのは、下の子が18歳になってから。あと10年強ありますから、自分の身の振り方も含めてゆっくり考えていこうと思っています」
そんな家庭でいいのかとママ友には言われた。「何か問題あるのかな」とヨシノさんは答えたという。
「私は夫を憎んでいるわけではないんです。彼にとって、家庭は責任をもたなければいけないもののようだし、子どもたちもかわいい。そして家庭は私にすべて任せきり。そういう役割でやっていくなら、それでいいと思っているだけです。親としての役割はお互い、きちんと果たそうねと」
いつしか夫への恋愛感情は消え、父親としてだけ評価するようになった。だから夫が浮気していても、特に何か言うつもりはないのだという。
「ママ友には理解されなかったし、むしろドン引きされたけど、私、そんなにヘンなことを言ってますか? 自分が悩まないように苦しまないように、家庭で子どもたちに悪影響がないようにと思ってやってきたら、こういう結論に達しただけなのに」
割り切ってしまえば確かに楽かもしれない。だがこの先ずっと、愛せない夫と暮らしていくことをどう思っているのだろうか。
「男女の愛情なんてなくても、家庭は回っていきますよ。うまく回っていけばそれでいい。むしろ両親が諍いを起こしたり反目しあったりしていたら、子どもたちが悲しむんじゃないでしょうか」
達観なのか強がりなのかわからないが、彼女は淡々と、穏やかに、しかし口調はさばさばしていた。自分が納得できる理屈をもって生活できるなら迷いも苦悩もないのだろう。
「今のところは、ですね。この先どうなるかわからないけど、ただ、見捨てないでとすがりつくようなオンナにはなりたくない。そう思っています」